一般社団法人
アクション・フォー・コリア・ユナイテッド

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オンラインセミナー「朝鮮半島情勢と日米の役割」講師:五味洋治氏(東京新聞論説委員)を実施しました

2020/09/17

 9月13日(日)の午後1時より、AKUJapan9月度オンラインセミナーを開催しました。今回は、東京新聞の論説委員であり、朝鮮半島情勢の専門家でいらっしゃる、五味洋治氏をお招きし、「朝鮮半島情勢と日米の役割」というテーマで講演をいただきました。
 当日は70名以上が参加し、五味氏により昨今の北朝鮮内部情勢の解説及び、周辺国の政治動向も踏まえた予測を伺いました。

 講演に先立ち、川崎栄子代表理事よりAKUJapanの紹介がありました。
 AKUが統一を実践する人、として韓国での発足以来、朝鮮半島の平和的統一のための活動をしてきたが、今、統一を成し遂げるべき時期に来ている。分断が朝鮮半島の人々の意思でされたのではない以上、統一のためにも外力が必要だとし、また、統一後は自由と民主主義を尊重する政権になって欲しいと述べ、集まった人々にも運動への参加を呼びかけました。

 その後、五味氏が以下の3つの点を中心に講演をされました。

1.「愛の不時着」から見える北朝鮮の実態
2.三重苦の北朝鮮経済
3.今後の日本とアメリカの役割

話題のドラマ「愛の不時着」の誕生背景
■北朝鮮の実情が非常によく描かれている。韓流ドラマの中で描かれる北朝鮮。
■韓国での有名映画作家のパク・ジウン氏は、「愛の不時着」の構想を2008年から持っていた。脱北作家のカク・ムンワン氏がこのドラマのリアリティを出すために非常に一役買っていた。北朝鮮の権力構造をよく知っているカク氏の描写が描かれている。


「愛の不時着」南北2人の作家

■ドラマを制作する際、「北朝鮮の最高指導部の権威を傷つけない」「人権問題に触れない」「収容所問題に触れない」この3つは最初の約束だった。
■実はこのドラマは、韓国内では大ヒットしたドラマではない。なぜかといえば、北朝鮮をテーマにしたドラマは韓国人には抵抗感がある(美化しすぎている)から。
■韓国では映画の事前検閲がずっとあった。しかし、事前検閲がなくなり、現在は自主的なチェックだけになっている。国家保安法、反国家団体を賞賛、鼓舞。宣伝をしてはいけない、という条項があり、韓国では北朝鮮に対する表現に反発する人が多くいる。

ドラマの中のシーンから見る北朝鮮の実情
■「愛の不時着」のうちの1シーンより。停電した列車に北朝鮮の人々が駆け寄ってくるシーンがある。彼らの目的は?
彼らは食べ物などを売るために来ている。実際、北朝鮮では、電車は停電すると3日、4日止まったままのこともある。電車を使っての移動も命がけ。
■韓国と北朝鮮で発電容量に大きな差がある。発電が足りない(総発電量が韓国の4.4%)理由としては、発電所数の不足、発電の技術不足、発電/送電設備の老朽化、地下の軍需工場に優先配分している。海外から送電しにくい、など。
■2018年の南北首脳会談でも発電所問題が話題に上った。
■電車、駅は日本統治時代に建設されたものがそのままになっている。一説によると、住民統制のまま、わざと鉄道に投資をしなかった、ということもある。鉄道インフラが整っていないがゆえに、経済発展も難しい。
■ドラマの中の「市場」のシーンは脱北者の評価が一番高い。市場は全国に400箇所あり、金正恩氏により黙認(公認)されている。これにより北朝鮮の住民は生活をすることができている。
■韓国から化粧品が入ってきて、北朝鮮の化粧品ブランドも発達を続けている。
■ドラマの中で描写されている「韓国ドラマ好きの北朝鮮兵士」北朝鮮の中で韓国ドラマの人気が出てきている。韓国歌謡も非常に人気がある
■北朝鮮の人々はなぜ韓国ドラマを見るのか。脱北者ユーチューバーによると「愛の表現が自然」だから。北朝鮮では「愛」という単語については基本的に首領や党に対して使われるものである。


2018年の南北首脳会談のワンシーン

北朝鮮の政治経済状況と日米との関係
■金正恩氏の権力の委任統治について。下の人たちに委任されるようになっていると言われている。健康問題や責任逃れ、もしくは集団指導体制に移行しているのでは、などの理由が上がっているが、少しずつ体制に変化が出ている。


北朝鮮の権力構造はいかに

■変化の兆し。労働新聞9月1日号の一面に、「部下たちが台風被害の現地で指導した」との記事があった。北朝鮮の専門家たちからすると、大きな変化ではないか、との意見。
■最近、不祥事が多い軍隊。空腹になった軍人が強盗に入るようなことも起きており、軍部の統制が効かなくなってきている。
■経済はマイナス成長(7~8%台)で、経済は壊滅的な状況になっている。これからの半年間、食糧が飢饉状態になると言われている。
■大統領選の行方と北朝鮮問題について。トランプ大統領は再選すると交渉再開。バイデン氏の場合、北朝鮮問題については積極的に動かない予想が立てられる。むしろアメリカと北朝鮮の緊張は高まるかもしれない。


いずれの大統領が就任するにせよ、情勢は大きく動くと考えられる

■総裁選についての記者クラブでの記者会見にて。拉致問題の行方について。安倍首相も一番心残り。とはいえ、国内問題が最優先課題であり、拉致問題までやる余裕はないのでは。しばらく棚上げになる可能性が高い。
まるで、1990年代末、北朝鮮の苦難の行軍時代、突破口を日本に求めてきた。その時に似ている。すなわち、戦後賠償として合法的にお金を求めることができるのは日本だけであった、その時に似ている。菅政権が安定すれば、北朝鮮に出向くこともありうるのでは。
いずれにせよ、今年の末から来年にかけて、日朝関係には何らかの動きがあるかもしれない。

質疑応答
■中国は北朝鮮を今後どのような外交カードに使うと思うか?
→中国はアメリカとの対抗上、北朝鮮に露骨に接近することを憚っている。また、中国から人の往来ができない、何かしたくてもできない状態。飢餓状態になれば物資を送るだろうが、当分の間は金正恩を静観すると予想される。生かさず殺さず、国を運営することを待つであろう。

■韓国側で北朝鮮に対しての同胞意識はどのようか?
→若年層:今の状態で良いという人が多い。年配:将来的には韓国が主導して北朝鮮を統一していかないといけない、という意見が多いが、韓国の中でも意見が分かれている。東西ドイツの場合は、南北の経済格差(GDP)が2~3倍。南北コリアの場合は44倍。これを吸収統一する場合は、一気に中進国になってしまう。文政権は北朝鮮に外貨が落ちる仕組みを作りたいが、それがうまく行っていない。一方で、北朝鮮は自国の経済は自国でなんとかしようとしているところに文政権のジレンマがある。また、政府もどのようにするのか。一国二制度というが、現在の中国と香港の状況を見てもそれは不可能に近い。

■若い世代は北朝鮮に対してどのように感じているか
→韓国の人たちは北朝鮮の人たちを異質な人たち、というふうに見ている。しかし、純粋で、世界を知らない、というだけであり、時間がかかる。再教育をしないといけない。ハナウォン(ソウル近郊にある脱北者の再教育の学校)では、切符を買う、バスにのる、ということを最初にやる。お互いの国が近づいていくには時間がかかる。ドラマが北朝鮮に流入して、韓国社会が北朝鮮内部に知られ、文化的に近くなれば、統一も近くなるのでは。

■南北コリアが統一するためにはそれ以前に北朝鮮の人権問題が改善し、ある程度の民主化が必要だと思うが、北朝鮮の独裁体制が変化するために考えられうるプロセスはどのようなものがあるか?
→人権問題を改善、民主化が実現すればその国の体制が変わるかというと、そういうわけではない。それは中国が実証している。むしろ、人々は、経済が発展していれば、何も文句は言わない、というのが実情。北朝鮮も人権問題でなく、経済問題の話から入る、例えば、非核化を進めればインフラ投資が受けられる。経済援助を受けられる、など。そのようなアプローチをとらないと、金一族の独裁体制は変わらないのでは。
北朝鮮にとっては経済的なメリットから始めるプロセスをとっていかないといけないと感じる。