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【特別寄稿】「プーチンはなぜ失敗するのか−ソフトパワーのないハードパワーは失敗する−」(ソ・インテクAKU韓国 共同常任議長)

2023/06/28

 この特別寄稿はAKU韓国共同常任議長ソ・インテク氏が、昨年(2022年)3月15日、ウクライナ戦争が勃発して間もない時点で韓国のウェブサイト「コリアンドリーム」に寄稿したものです。ウクライナ戦争から、朝鮮半島統一実現への教訓を学ぶ上で貴重な見解であるため、この度、日本でも紹介させていただきます。(※)は事務局で加筆した部分です。
引用元:プーチンはなぜ失敗するのか
https://www.kdtimes.kr/news/view.php?no=1325



 20世紀、ロシアは米国とともに世界を二分する超大国で、ソ連となってほぼ半世紀の間、世界の半分を支配する国家だった。しかし、米国と西側世界と展開した冷戦に敗北し、1991年、解体の道に入った。かつてソ連の支配下にあった東欧とアジアの衛星国家は、いずれも独立して各自、生き残る道を歩んでいる。大帝国の栄光を経験し、一瞬にして後進国となったロシア国民の喪失感は非常に大きいものだった。

 プーチン大統領は、このようなロシア国民の喪失感に深く入り込んだ。無気力なロシアを強力な国家にし、過去の栄光を再現するということだ。彼は高い人気を博して、22年間長期政権を維持している。ロシアは過去のような姿ではないが、豊富なエネルギー資源を活用して強国に成長した。ロシアを脅かすチェチェンを軍事的に攻撃して服属させ、ジョージアを圧倒的な武力で屈服させた。そして2014年、クリミア半島をこれといった抵抗もなく強制併合した。このようなプーチン大統領の行動は、ロシア内の高い支持率、そして世界最大の核兵器保有国という自信から生まれたものだった。

 今年(※2022年)2月24日、ロシアはウクライナに電撃侵攻した。欧州の最貧国であるウクライナを占領するのは朝飯前のように見えた。莫大な戦費と犠牲を払いアフガニスタン戦争から辛うじて抜け出した米国はウクライナ戦争に介入しないと判断し、経済的損失を何よりも心配する欧州諸国はウクライナに対する軍事的支援には消極的だと判断した。何よりも米国と共に対立している中国が、自分の側に立って西側の経済制裁を無力化させるだろうという信頼もあった。

 しかし、彼のこのような判断は見事に外れた。ウクライナの予期せぬ抵抗は、戦争を膠着状態に陥れた。ロシア軍はそれほど強力ではなかった。むしろこの戦争は眠っている欧州を目覚めさせた。これまで安易に考えていた欧州諸国に、経済より安保が優先だという認識を持たせた。さらに全世界には、「ロシアは信じられない国家」だという共通の認識を与えた。そして、米国は、軍事的な方法のほかにもロシアを苦しめる武器が多いという事実を示した。世界各国の企業が損失を甘受してロシア市場から撤退する姿を見て、ロシア人はパニックに陥った。ルーブルの暴落とロシア国家の破産は序幕に過ぎない。果たしてこれは何のための戦争なのか。

 ロシア人を大量虐殺する腐敗したウクライナ政府からウクライナ人を解放するというプーチン大統領の戦争に対する名分は、その光を失った。ロシア軍の無差別爆撃によって燃えている都市と、その中で血を流して死んでいく民間人の姿が、世界のメディアを通じてリアルタイムで中継されている。プーチン大統領の侵略戦争を糾弾する隊列に全世界が参加しているのだ。この隊列にロシア人も例外ではない。プーチン大統領はすでに失敗している。彼の失敗はロシア人を長い間苦しめるに違いない。

 プーチン大統領がこのように自殺攻撃を選択したのは、恐らく自国の歴史についてまともに勉強しなかったためではないかと思う。かつて華やかだったソビエト時代がどのように生まれたかだけを観察しても、このように無謀な侵略戦争を繰り広げることはなかっただろう。

 欧州で最も後進国であった農業国家ロシアがソ連という大帝国として誕生したのは、レーニンが起こしたボリシェビキ革命(1917)のおかげだ。ロシアは世界初の共産主義国家となり、周辺諸国に共産主義革命を輸出し始めた。労働者と農民の天国を作るというマルクス主義はソ連の強力な武器だった。ソ連の経済的・軍事的ハードパワーによって後押しされる中で、共産主義というソフトパワーはその威力を発揮した。帝国主義と世界大戦が通り過ぎた場所に、封建的秩序を崩壊させて新しい世の中を作るという共産主義者たちが雨後のたけのこのように現れ始めた。アジアと東欧諸国で彼らの協力がなかったなら、ソ連という帝国は決して誕生しなかった。言い換えれば、ロシアの過去の栄光は理念とビジョンが誕生させたものだ。この理念とビジョンが偽りの約束であることが明らかになったため、ロシアの栄光は一瞬にして水泡に帰したのだ。

 それでは、プーチン大統領のロシアは、どのようなソフトパワーを持っているか。プーチン大統領が唱えるロシア民族主義は、周辺諸国が共感できる普遍性を持っているか。周辺諸国にどのような未来のビジョンを提示しているか。筆者が知る限りでは皆無に見える。ハードパワーだけでは決して世界の強者にはなれない。

 プーチン大統領が憎悪する米国も問題の多い国だ。彼が憎むのには、確かに妥当な理由も存在する。しかし、たとえ憎む敵でも学ぶべきことは学ばなければならない。米国がなぜ超大国なのか。それは米国が自由世界の中心国家だからだ。米国が超大国だから、自由世界の中心国家なのではない。軍事力と経済力のためだけではないという意味だ。米国が超大国になったのは、米国が持っているソフトパワーにある。米国が主張する自由と人権、民主主義の価値がより良い未来を作ってくれるという信頼を提供しているからだ。米国の友好国であることは、経済的にも安全保障的にも良いことが証明されている。そのため、米国には同盟国家が多いのだ。ウクライナも躍起になってその同盟に入ろうとしている。

 国家がどのようなビジョンを追求するかは、統合するにおいて非常に重要な要素である。米国は、世界各国から押し寄せてきた多様な移民者によって建国された唯一の国だ。そのような米国が分裂の道を歩まずに超大国となったのは、仕方なく正しい道を選択したためだ。多民族国家である米国が民族主義を選択するとすれば、それは亡国の道となるため、米国には一つの選択肢しかなかった。すなわち、すべての人たちが同意できるビジョンを提示する道しかなかった。そこで米国の建国の父たちは「すべての人間は平等に生まれた」という信念を国家建設のビジョンとして提示した。米国は独立に成功し、このビジョンを実現するという約束を中心に連邦国家となり、民主主義と市場経済で繁栄を成し遂げた。このような米国の成功を、いまだに多くの国が憧れて真似しようとしている。米国は完璧な国ではないが、米国が人権と自由、民主主義の価値を自ら実現しようと努力し、またこれらの価値を全世界に拡大し続ければ、米国の国際的リーダーシップは持続するだろう。

 私たちにも同じ質問を投げかけてみよう。私たちは果たして何によって統一を成し遂げるのか。韓国の圧倒的な経済力と軍事力の優位だけで統一が可能だろうか。それはあくまでもハードパワーに過ぎない。ハードパワーだけでは目標を達成できない。北朝鮮を動かし国際社会を説得して統一を実現するためには、ソフトパワーがなければならない。それはビジョンを意味する。統一を通じてどのような国を成すかに対するビジョンと哲学がなければならない、過去のソ連や米国のように…。これがまさに私たちが唱えるコリアンドリームだ。

 コリアンドリームは目に見えないソフトパワーだ。広く世の中に利するという精神は、5000年間悠久なる歴史を過ごしてきた我が民族の共通の理想であり、私たちのアイデンティティだ。統一は弘益人間の精神を実現する過程だ。弘益人間を実現した新しい国は我が民族だけでなく、周辺国家と世界に広く利する国だ。理想的に聞こえるかもしれないが、すべての文明は理想に基づいて作られている。韓国は文化創造力の面で世界最強だ。K‐POPと韓流は今、世界を魅了している。この文化創造力に私たちのものを加えれば決まりだ。2022年に再び始まるワンコリア・グローバルキャンペーンにかける期待がまさにこれだ。韓国の文化創造人たちの積極的な参加を祈願する。


徐仁澤氏